「ムシの日」にあたりこの業界を語る座談会

ムシの日座談会 2024

参加してくださった方

当協会 会長
河合 智之 氏
愛知県保健医療局生活衛生部生活衛生課 主佐(環境衛生グループ)
金原 紀章 氏
名古屋市健康福祉局・名古屋市保健所健康部環境薬務課環境衛生係 係長
森 徹 氏
当協会 副会長
宮田 勉 氏

6月4日は「ムシの日」 7月4日まで「ムシなし月間」

 きょう6月4日は「ムシの日」。日本ペストコントロ―ル協会は毎年7月4日までを「ムシなし月間」として害虫・害獣駆除の強化月間として定め啓蒙活動を展開する。人の生活に害や不快感をもたらすハチやダニ、ネズミなどの小さな生き物からイノシシやハクビシンなど農業に被害を及ぼす大型獣の駆除など守備範囲は広い。こうした活動を行う団体である公益社団法人愛知県ペストコントロ―ル協会は昨年度55周年を迎え、今年度は理事会の若返りを図った。協会と行政の代表者を招き現状と課題を聞いた。

― まず、愛知県ペストコントロ―ル協会の紹介と活動について、川合会長よろしくお願いします。

川合:協会は今年度56周年を迎えます。2024年3月31日現在の会員数は、正会員68社、賛助会員11社、合計79社。主な事業は、ねずみ・害虫など防除知識の普及啓発や相談事業、行政関係の有害動物駆除依頼への対応で、行政主催の行事への参画や講師派遣も行っています。毎年6月4日から7月4日のムシナシ月間に合わせて「ムシの日イベント」を開催しており、今年は6月1日に愛・地球博記念公園内の三日月広場で行いました。
現在、愛知県及び県下29市町村と「災害発生時における防疫活動等の協定」を結んでおり、講習やセミナ―、市町村から依頼を受けて器具の点検なども行っています。

― 新会長を迎え理事会も若返りました。今後どのような取り組みを考えていますか。

川合:メンバ―も少しずつ入れ替わり、05年の愛・地球博のときのメンバ―は数人しかいません。当時は大掛かりな催し物があると会員同士の結束が強まったものですが、全員が集まって協力し合う行事がほとんどない中、横のつながりが弱くなeているように感じます。いつ起きるか分からない災害に備え、会員同士の結束を強めていきたいと考えています。最近はヒアリ、アルゼンチンアリ、セアカゴケグモ、イノシシ、アライグマ、ハクビシンなどの有害生物に対する問い合わせもかなり増えています。正しい施工方法を会員同士が共有し、どの地域でも対応できる形を取る必要があります。ハチの駆除に関しては、55周年記念事業としてデ―タ取りをし現在まとめ作業に入っています。継続的にハチの生態や生息数を調べ、県民の皆様に周知する活動を進めてまいります。宮田何かあったときにみんなが集まって取り組むためにはコミュニケ―ションがしっかり取れるかどうかが大切です。体制が若返った今、横のつながりを大事にしていきたいですね。
最近の気候の変化に伴い、トコジラミ、ス―パ―トコジラミといった新たな侵入外来生物の被害が報告されています。研修を行い、対策ができるよう準備をしていく必要があるでしょう。

― 行政へ寄せられた衛生害虫に関する相談件数は。

金原:コロナ前の19年度が92件、コロナ対応で保健所の業務が多忙を極めた20年度が28件、21年度15件、22年度9件、23年度は少し増えて34件となりました。トコジラミの相談が徐々に増えてきています。県民の皆さんに対しては、市町村で行われる健康まつり等で模型やパネルを置いて啓発活動を行っています。
ねずみ・昆虫等対策では、建築物衛生法にのっとり、IPM(総合的有害生物管理)の考えに基づく管理方法の普及に努めています。愛知県では08年3月に「県有施設における農薬・殺虫剤等薬剤適正使用ガイドライン」を定めて研修会を行ってきました。現在では全ての県有施設においてIPMの考えに基づく管理が行われています。

森:19年度は2327件、コロナが始まった20年度でも2068件、21年度1816件、22年度2126件、23年度は集計中ですが、1500件強の問い合わせや相談がありました。5~6割がハチに関する相談となっています。今後は相談の増加が予想されるトコジラミに関する周知啓発も必要になると考えています。
スズメバチの危害防止運動やゴキブリ・蚊の防除については、ポスタ―の作成や講習会の開催以外に名古屋市のウェブサイトでも積極的に啓発に取り組んでいます。最近はマダニが媒介する感染症の日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が右肩上がりで増えています。市民の皆様に対策をしっかり取っていただけるよう周知していかなければいけないと考えています。

― 行政へ寄せられた衛生害虫に関する相談件数は。

川合:昨年度は1859件で、前年度の1972件から少し減少し、駆除件数は955件(51.4%・対前年比10%増)となっています。毎年相談件数が最も多いハチ類が993件から861件(13%減)で、これは天候が大きく影響しています。有害動物に関しての相談は昨年度411件で、前年の111件から大幅に増加しています。

― 災害時の防疫活動には行政と協会の協力態勢が欠かせません。行政が行っている対策と協会に期待することは。

金原:避難所へ避難してからの二次被害を抑えるには、消毒や有害生物の駆除が重要です。災害時の防疫活動に迅速に対応するために「防疫隊48」や「感染症予防衛生隊」を結成されている協会は、非常に心強い存在です。今年度は、被災地の避難所の応援に入る保健所職員向けに防疫・消毒関係の講習会をお願いしています。
愛知県においては感染症対策の強化を図るために、18年3月に「感染症発生時における消毒業務に関する協定」を締結しています。有事の際にはご協力をお願いします。

森:名古屋市も13年に協会と災害等発生時における防疫活動の協力に関する協定を結んでいます。今後もぜひお力添えをお願いします。
併催研修などを通じて協会の持つ専門知識、豊富な経験を学ばせていただいています。そういった機会をこれからも大切にしていきます。

― 行政からの要望を受けていかがですか。

川合:有事の際、誰がリーダーシップを取って、どういう班構成で、どのように効率良く回るか、待たれている住民の皆さんを不安にさせない的確なアナウンスをどう行うか。これらのことを考えながら正しく迅速に動ける体制を再構築する必要があります。

宮田:業務フロ―の再確認が必要ですね。行政と行う研修会の中で生の情報を共有し、担当者とのコミュニケ―ションを図っていかなければなりません。

― ありがとうございました。